機械の生存率を考える (ヤンマートラクターの歴史)

ヤンマーの農業機械年表 デカイです
ヤンマーの農業機械年表 デカイです

「ダイナミックフェァ2011」(JAグループ茨城の 農機・生産資材展示会)でのヤンマーのブース、無人ヘリなど、変わったものが展示してあって興味深かったですが、発売した機械を年代ごとに分けた巨大な年表が目を引きました。こういうの、おもしろいですね。なぜかトラクターの部分しか写真を撮らなかったのですが、大失敗です。

その年表トラクター部分(クリックで拡大します)

ヤンマー農業機械年表その1ヤンマー農業機械年表その2ヤンマー農業機械年表その3ヤンマー農業機械年表その4

その年表によると、ヤンマー初の乗用トラクターYM12Aの誕生は1963年、ヤンマートラクターは今年で47歳になります。クボタのトラクターが生誕50年とありましたので(プライスカードのキャッチにそうありました)、国産の乗用トラクターは、大体40代後半から50台ということになります。

写真を探していてギモンに思ったこと

この年表を参考に、ネットで写真を集めてみました。すると、ちょっと不思議なことがありました。外国で古いトラクターが大事にされているのはわかっていましたが、1960年代後半から1970年代後半にかけて厚く写真が存在し、1980年代後半になると少なくなって、1990年代から2000年にかけて薄く薄くなっています(2000年の辺りはほとんどない)。

普通に考えれば、古いものほど画像、個体が少なく、新しいものほど画像、個体が多いような気がするのですが、実際は全く逆になっているということです。これは興味深い発見でした。探し方に重大な欠陥がある可能性(海外と日本で品番が違うなど)は十分ありますが、「普通でない」状態を想像するほうがおもしろいので、このまま考えてみます。

1960年代後半から1970年代後半にかけて、たくさん輸出されたのか、とても良く、愛されるトラクターだったのか、それともものすごく丈夫だったのか・・・古いのをきれいにしたので、「見て!見て!」というのもあるかもしれません。

また、1990年代後半から2000年初めの辺りは、輸出されなかったのか、もう壊れて捨てちゃったのか、写真を撮るヒマもなく、今現在も使われているのか・・・

他社の製品も似たような状態のように見えます。稼ぐ機械としてはともかく、それとは別のどこか、国を問わず、メーカーを問わず、乗用トラクターが産まれて1970年代後半にかけての製品に惹かれる人が多数いる、ということを表しているのではないでしょうか?

1963年YM12A

年表の写真を探してみました。

年表によると、1960年YM12A 耕耘機発売から2年で乗用トラクター発売
年表によると、1960年YM12A 耕耘機発売から2年で乗用トラクター発売

写真は「国立科学博物館-産業技術の歴史」というサイト(マイナーなもの多数で大変興味深いです。)より

1968年YM273

YM273 1968年式 27馬力? 水冷縦型ディーゼルエンジン搭載。
YM273 1968年式 27馬力? 水冷縦型ディーゼルエンジン搭載。

1974年YM1500D

1974年 YM1500D 4輪駆動トラクターが登場。2気筒ディーゼルエンジン 17馬力
1974年 YM1500D 4輪駆動トラクターが登場。2気筒ディーゼルエンジン 17馬力

続きを読んでね!の画像

まだまだ写真と文章で長くなってしまうので畳んでおきます。続きを読むのリンクをクリックしてね!

1976年YM3000

1976年 YM3000 3気筒エンジンを搭載 騒音、振動を軽減 33馬力
1976年 YM3000 3気筒エンジンを搭載 騒音、振動を軽減 33馬力

1976年YM2210

1976年 YM2210 2気筒ディーゼルエンジン 世界で初めて小型トラクターのトランスミッションにパワーシフト機構を採用。25馬力
1976年 YM2210 2気筒ディーゼルエンジン 世界で初めて小型トラクターのトランスミッションにパワーシフト機構を採用。25馬力

1982年YM4220

1982年 YM422D 湿式ディスクブレーキを採用。 45馬力
1982年 YM4220D 湿式ディスクブレーキを採用。 45馬力
この年代のもの、たくさんあるんです! サイトもいっぱいです。
この年代のもの、たくさんあるんです! サイトもいっぱいです。

1986年FX42

1986年 FX42D 前輪増速装置(ハイグリップターン)を開発し、小回り旋回を実現 45馬力
1986年 FX42D 前輪増速装置(ハイグリップターン)を開発し、小回り旋回を実現 45馬力

1989年F535

1987年 写真はF435 従来の機械式ガバナーに代わる電子ガバナーを初搭載。
1987年 写真はF435 従来の機械式ガバナーに代わる電子ガバナーを初搭載。

1995年CT95

1995年 CT95 ゴムクローラー装備&丸ハンドル採用で操作性向上。本格フルクローラートラクター 
1995年 CT95 ゴムクローラー装備&丸ハンドル採用で操作性向上。本格フルクローラートラクター

1996年US46R

1996年 US46R エコディーゼルエンジンを搭載したエコトラを開発
1996年 US46R エコディーゼルエンジンを搭載したエコトラを開発

1997年AF290R

1997年 AF290R 水田速耘エコトラに続いて、エコトラ田畑効率型を開発
1997年 AF290R 水田速耘エコトラに続いて、エコトラ田畑効率型を開発

1998年AF660

1998年 AF660 だんだん写真がなくなってきました。 エコディーゼルエンジンを搭載したパワーフォルテトラクター開発
1998年 AF660 だんだん写真がなくなってきました。 エコディーゼルエンジンを搭載したパワーフォルテトラクター開発

2006年EG782

2006年 EG782 国産初の電子制御無段変速HMT搭載トラクタ
2006年 EG782 国産初の電子制御無段変速HMT搭載トラクタ

2009年EG441

写真はEG400 世界初の高効率無段変速I-HMTミッションを搭載
写真はEG400 世界初の高効率無段変速I-HMTミッションを搭載

2011年EG105

2011年 EG105 ヤンマー初のハーフクローラートラクタが登場
2011年 EG105 ヤンマー初のハーフクローラートラクタが登場

濃いところは産まれてから1970年代後半まで・・・そのギモンについての考察

手作業に比べれば、劇的に効率は上がったでしょうが、それでも昔の機械です。故障、不都合、今に比べれば手を焼くこともたくさんあったに違いありません。しかし、色々手間がかかった分、「かわいい」というのもあるのでしょう。 特に奥樣方からご批判も多い「シュミ」の世界ですね。

15年くらい前昔の、ちょっと大きいパソコンのプリンターも、目詰まりを取るのにインクの吸引を手でチューチューやったり、無茶苦茶遅かったり、手は汚れるし、いつもバラしていて稼働率が悪かったり・・・それでも、省スペースで部品点数が少なく、今より電気も喰わず、「壊れても自分で直せる」って感じでした。もちろん今の機械はメンテナンスフリーで、故障も少なくなってきてるんですけど、色々なところが電子制御で、壊れたらサービス呼んで直すしかないです。

単車もそうです。ラクに速く走るのなら圧倒的に今の単車ですが、昔の単車に乗っても楽しいし、人にその良さを話したくなる。それはやっぱり手がかかったからかな? そう考えると、どんな言語であれ(たとえそれがパンチングインターフェースでも)機械と会話した分だけ、コミュニケーションをとった分だけ愛着も湧くのでしょう。

そして勝手な結論へ

役に立たない、お金にもならない愛着だけでなく、今の機械だって、昔の言うことを聞かない機械と対話した経験を持って接したほうが、より関係はスムーズに行くのではないでしょうか? 小さなトラブルなどによる稼働率の低下などにも、過去の経験は生きてくるはずです。

手間がかかって大変だった過去も知った上で、最新式の機械をオペレーションする・・・やっぱりこれが最強ですね!

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“機械の生存率を考える (ヤンマートラクターの歴史)” への4件の返信

  1. Hello, I’m from Czech Republic, I need from you manual and service manual for Yanmar FX265. Help me very much. Thank you Martin Holan

  2. 野良通信さん
    なるほど!
    センサーの寿命が機械の寿命、大変美味であるが旬が短いってことですか!
    たしかにセンサーで制御すれば大きな改変しなくても良いし、やりやすい

    もし、長く愛される機械を作りたければ、機械制御のものを作るしかない・・・
    会社としては嬉しいような、儲からなくて悲しいような気持でしょうね

  3. 草刈機が水没した時、車も二台廃車になりました。車は床より上に水(海水)が上がると配線とセンサーがダメになります。
    その時、耕耘機と運搬車もエンジンが首まで浸かりましたが、まだ動いています。カブも生き残っている。こうしてみれば、センサーが何処についているかが問題なんだろうと思います。新しいトラクターが生き残れないのは、センサーの劣化が原因ではないでしょうか。50年前も今も基本構造は変わっていないわけで、センサーを付け足して新たな機能(機種)としているこのことが問題だと思います。
    ちなみに、30年前のコンバインは足回りのセンサーの誤作動でおかしな挙動をしていたので、取り外しましたら、立派に現役です。田や畑で使うものは土と水にまみれます、これは、電気信号を拾うセンサーの最も苦手なところではないでしょうか。愚考してみました。

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