今日はhokkaidoujinさんにお招きいただき行ってきた、第34回国際農業機械展in帯広 で行なわれていたオールドトラクター保存会による「クラシックトラクター展」で見た、フェントFENDT GT-231「撮りトラ」 です。
第34回国際農業機械展in帯広では国内外農業機械メーカーの新品展示が行なわれていたわけですが、このようにオールドトラクターも展示されていたのでした。
Fendt F231GTです。どちらが前かよくわからないユニークなスタイル。ツールキャリアというカテゴリーに入るのでしょうか・・・現役っぽい仕上のレストアでとても自然で凄く気に入りました。ここに展示してあったトラクターの中では一番です。(そもそも現役なのかもしれませんが)大きさは軽トラくらい。Fendt F231GTはtractordata.comによれば 、MWM製 2.2L 3気筒ディーゼル、35馬力/2050rpmとなっています。また、製造年が1967年〜1991(!)年とあり、もしこれが本当ならとんでもないベストセラーということになります。
Wikipediaではこのように幌付きの写真が載っています。 余計謎の形ですね。そこでの記載によれば製造期間は1967年〜1993年とあり、超ロングセラーだったのは間違いなさそうです。F231 GTのバリエーションはGTSとGTWがあり、(僕の見た機体は銘板からGTSということがわかっています)エンジンのバリエーションは、シリアル 00001-14999 1967年〜1978年にかけてMWM D 308-3 2233 cc; 32馬力、(僕の見た機体は同じく銘板からMWM D 308-3ということがわかっています。キャプションには35馬力とありますが、32馬力のようですね)シリアル15000-16773 1978年〜1981年にかけてMWM D 325-3 2552cc ; 35馬力、シリアル 16774〜 1981年〜1993年にかけて MWM D 327-3 2827cc ; 35馬力・・・と年を追うごとに改良されている感じです。
MMWエンジン?
ドイツの古いトラクターはイメージ、エンジンで繋がっている感じがしています。MMW・・・どこかで聞いた事があると、昔の記事をひっくり返すと、このF231-GTと同じようなユニークな形のランツオールドックA1806に行き当たりました。
その記事『今度は前が後ろで前向き、ランツオールドックA1806・・・「撮りトラ@土の館」』 によると・・・
ランツオールドックトラクタA1806 これもどこを見てよいかピントの抜けてしまう変わった形です。真ん中にはパネルが置いてあるし・・・キャプションには・・・機種名:ランツオールドックトラクタ 形式・仕様:A1806型 18馬力 製造国・国:ランツ社 ドイツ 導入年度:1959年(昭和34)年 使用経過:最初の購入者は、当時の名簿と機体NOで真狩村の藤塚重一と判明した。昭和63年伊藤入手、喜茂別町の三野農機で整備している。 当時は万能トラクタとしていろいろな作業に使われていた。 前方に箱形ダンプ式の荷台があった。作業機も前方のフレームに取りつく方式。
とあります。調べてみると、エンジンはMWM製水冷2気筒1.3Lディーゼル 16馬力/2000rpm。同じMWM製エンジンが採用されています。
朝の調べ学習はMWM
MWM は何回か散発的に調べていて、DEUTZと関係があるとわかっていたのですが、初めの初めは1922年にあのベンツさんの作ったBenz & Cie. という会社の作る据え置き型のエンジン生産外部委託先としてMotoren-Werke Mannheim (略してMWM。マンハイムエンジン工場とでも訳すのでしょうか?)として設立されたそうです。
MWMは1924年にはトラクターも作リはじめ、そのエンジンはルノー、フェント、ランツ、バウツ、ホルダーなどに採用されていたそうです。
MWMは1985年にDEUTZに買収され、2007年にはDPS(ドイツパワーシステムズ)になり、2010年にキャタピラーに買収されて、現在ではキャタピラーエネルギーソリューションと名乗っているそうですが、伝統的な名前MWMはブランドとして残されているようです。
マンハイムはベンツのお膝元だった
トラクター、特にドイツ製のトラクターを調べていると、ドイツ、バーデン、マンハイム という地名に行き当たります。LANZ、ジョンディアという名前からそうなるのですが、ベンツ もマンハイムの自転車屋さんから始まったんですね!
なんてすごい町なんでしょう、マンハイム!
これは斜め前から見ているという図になります。FENDT自体はWikipediaによると 、現在はAGCOグループ傘下のブランドで、Xaver Fendtによって1937年に設立され、1997年にAGCOに買収されたトラクターメーカーとあります。
ステキな看板が付いています。tractordata.comによると製造年が1967年〜1991年、Wikipediaによると製造期間が1967年〜1993年ということですから、若干の食い違いが見られますが、そこはそれです。
Fタイヤの内側に油圧シリンダーが見えます。
おお!ダンプなのか?
ダンプの事を探していたら、ちょうどF231GTのFacebookページがありました。 プロフィール写真はまさにダンプ!軽トラサイズでディーゼル、おまけに油圧ダンプ!これ欲しい!
VIDEO
↑YouTubeの映像も見つけました。凄く力が入っています。ダンプしているところも見られます。F231GT、いいですねえ・・・
ちょうど荷台とのつなぎ目あたりに銘板が見えます。
拡大してみます。F231GTSだということがわかります。また、エンジンはMWM D 308-3ということも書かれています。
後ろからの写真。ただのダンプではなく、ちゃんとPTOが付いている事がわかります。中央下のピンは前出のYoutubeの映像で握るとロックが外れるワンタッチタイプのピンでしたね! 同じく映像ではサスペンション付きのグラマーのシートだとありましたけど、残念ながら写真がありません。灯火類のソケットと、油圧取出し口のようなものも見えます。
この牽引フック部分には別に銘板が付いています。
特別な感じです。そういえばちょっとヒッチボールに、握りの部分の形が似ていましたね。
右上のアンテナのようなものは油圧の操作レバーのようです。手前に引くと下げ、向こうに押し出すと上げ。左のレバーが前、右のレバーが後ろとあるのですが、もしかして右左の油圧を別々に操作できる・・・ということなのかもしれません。三転ダンプのような使い方ができたのかも。
僕はお子様的にスイッチやメーターが並んでいるのが好みなので、F231GTのインパネはストライクです。メーターは緑のトラクターではおなじみのVOD です。
ウインカーはHELLA
燃料タンクキャップはギザギザの大きなタイプ。
タンク部分の底は一段下がっていて、その少し上に窓が付いています。これって燃料確認用窓かもしれません。ここを切るとリザーブタンクに突入・・・という感じではないでしょうか?
VIDEO
↑このエンジン、3気筒の空冷ディーゼルのようです。
ボッシュの燃料ポンプ。
これもボッシュ製なのですが何の部品でしょう?オイルポンプ?
全体的に丸みを帯びたエンジンにピッタリの形をしているオイルバスフィルター。
最も空冷らしい空気取り入れ部分。半円状の網々スクリーンが付いています。
正面にのあおり部分にプレートが付いています。
中央にフェント・ワンマンシステムと大きく書かれています。確かに油圧のダンプだし1人で油圧を操作して何でもできちゃいます。このフェント・ワンマンシステムは1959年にF220GTでドイツ農業協会(DLG)銀賞を貰った・・・と書かれています。DLG銀賞・・・以前ウニモグで見ましたよね!
こちらはDLGシルバーメダルを貰ったF220GT(写真はWikipediaより)
北海道上富良野町にあるスガノ農機の『「土の館」 土と犂の博物館』 で見た、ダイムラー・ベンツのトラクター(といっていいですよね?)ウニモグ411。
こんなバッジが付いていました。下のバッジForsttechnischen Prüfungsausschusses (FPA)についてのことは『シルバーメダリスト!ウニモグ・・・「撮りトラ@土の館」』の記事 を読んでもらうとして、今回は上のバッジがDLG関係です。
Silberne Preismünze der DLGとあります。DLGシルバーメダルという感じの意味。ウニモグもこのフェントと同じ賞を貰っていたのでした。
WikipediaによるとDLG(Deutsche Landwirtschafts-Gesellschaft)とは
ドイツ農業協会(DLG)はフランクフルトに本拠を置く、ドイツの農業・食品産業の組織。非営利であり、約25500のメンバーの会費やサービスの収入、政府補助金などにより運営されています。
とあります。ここにフェントやウニモグが銀賞をもらったわけですね。
ウニモグ博物館というサイト で(ウニモグ博物館のサイトと呼ぶべきでしょうか)1951年6月3日にウニモグ・タイプ2010がドイツ農業協会(DLG)のシルバーメダル授与、Silberne Preismünze der DLGを受賞とありました。1951年の受賞は重みがあって凹凸のあるレリーフ状のバッジを作って車両に貼ったけれども、フェントの1959年の受賞はそれほどでもなく、ペラいちのプレートを作って貼った感じになっていますよね。
そういえば以前見たドイツファールのロールベーラー にもRASE(イングランド王立農業協会)シルバーメダルを貰ったようでした。こちらはただのステッカーでしたけどね。
ダラダラとF231GTの各部を紹介してきて最後がホイールになってしまいました。何ともしまらない話です。
SÜDRADと銘があります。以前見たFENDT FARMER306LSA TURBOMATIKのホイールは同じ朱赤に塗られていても、ジョンディアなどと同じのラマーズのホイールでした。
ポルシェやビートルも使っているLammerz のホイール!(もちろんJDも)
これが以前見たFENDT FARMER306LSA TURBOMATIK
同じロゴですね 1966年のVW1200,1200A,1300、それからカルマンギア用とあります。
このホイールです。なかなかカッコイイ!
しかし今回F231GTで見たのは、SÜDRAD(既出の写真)
しかし、ラマーズと同じようにドイツ車のホイールにも採用されていたようです。SÜDRADはWW2後のドイツで1946年に創立した会社で、紆余曲折はあったようですが現在も活動している企業のようです。
全体的にコンパクト。ディーゼルで、ダンプ付きで油圧も使えてPTO取出しで作業機も使える・・・まさに全部付きという魅力的名パッケージです。40年近くも売られていたというのも頷けますよね!こういうの欲しい!と思っちゃいました。
今日はこんなところです。また明日!
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