システムとマチックのせめぎ合い。60年代のイセキ(ZETOR)TZ5511/TZ4511/TZ3511「昔のカタログ」

今日は昨日からの続き、札幌農学校第二農場で見た、井関農機ゼトア5511/4511/3511のカタログ、「昔のカタログシリーズ」その2です。

1968年(昭和43年)中頃から1971年(昭和46年)中頃まで販売されていたゼトア4511/3511のカタログは白黒+1色で、フルカラーだった5511のカタログに比べてグッと60年代っぽくなっています。
1968年(昭和43年)中頃から1971年(昭和46年)中頃まで販売されていたゼトア4511/3511のカタログは白黒+1色で、フルカラーだった5511のカタログに比べてグッと60年代っぽくなっています。

ゼトア5511 銘柄形式ゼトア5501 種類 ディーゼル 冷却方式 水冷 サイクル数 4 シリンダー数 4 内径×行程(mm) 95×110 総行程容積(cc) 3,120 圧縮比 17.9:1 出力(ps) 57 定格回転数(r.p.m) 2,200 車両総重量(kg) 2,270 荷重 前輪(kg) 900 荷重 後輪(kg) 1,370 全長(本体のみ・mm) 3,475 全巾(標準状態・mm) 1,740 軸距(標準状態・mm) 1,620 輪距 前輪最大 1.725 輪距 前輪最小 1.330 輪距 後輪最大 1.800 輪距 前輪最小 1.425 最低地上高(mm) 460
売り文句はゼトアトラクターは、世界的に有名な機械技術を持つチェコスロバキヤで生まれました。
すぐれた各部機構、強力無比なエンジンの装備—理想的な機体構造でどんなに過酷な条件下でも、常に最高の作業性能を発揮!合理化に前進する日本農業の担い手として、みなさまのご期待にお応えできるのがこのゼトアトラクターです。

とあります。

次のページは色々な意味でとても興味深いです・・・ まずは左の図。ゼトアマチックの説明なのだと思いますが、どこかで見たような絵・・・そう、ファーガソンシステムです!
次のページは色々な意味でとても興味深いです・・・
まずは左の図。ゼトアマチックの説明なのだと思いますが、どこかで見たような絵・・・そう、ファーガソンシステムです!
A catalogue of ferguson 35. In 1957?1958? Tokyu which was a Japanese importer published it.
これぞ60年代といった趣のファーガソン35のカタログ・・・ファーガソン35はtractordata.comによると1960年〜1965年、同じくtractordata.comによればZETOR3511/4511は1968年〜1972年ですから、ファーガソン35はZETOR3511/4511より先を走っていたことになります。それをふまえてページをめくってみると・・・
おっ?!・・・これは
ファーガソンシステムの説明の図です。なんとな〜くは理解できますけど、僕には正確には理解できていない感じが常に残ってしまいます。とにかく比較的小型で軽いトラクターが目一杯その力を(主に牽引力で)発揮できるという画期的なシステムだったようです。
両者は微妙に違うのですが、上の2つの図はクルマがゼトアに変わっただけで全く同じですよね?よっぽどファーガソンシステムの説明が当時よくできていたのだと想像できます。
両者は微妙に違うのですが、上の2つの図はクルマがゼトアに変わっただけ(向きも違うか・・・)で全く同じですよね?よっぽどファーガソンシステムの説明が当時よくできていたのだと想像できます。

「農具にかかる重量は後輪に誘導され、より強力な牽引力 を発揮します」 ファーガソン・トラクター独特の油圧装置によりますと作 業員の調節で農具を自動的に希望の深さに保つ事が出来ま す。更に独特の三点支持装置に依って農具に掛る重量が後 輪に誘導されますから特別にタイヤに水を入れるとか、鉄 塊を取付ける必要はなく、農具に重量が掛れば掛る程牽引 力は増大し、従来此種トラクター馬力では不可能視されて いた作業を容易たらしめました。
以下ファーガソンシステムの説明です。「農具にかかる重量は後輪に誘導され、より強力な牽引力 を発揮します」 ファーガソン・トラクター独特の油圧装置によりますと作 業員の調節で農具を自動的に希望の深さに保つ事が出来ま す。更に独特の三点支持装置に依って農具に掛る重量が後 輪に誘導されますから特別にタイヤに水を入れるとか、鉄 塊を取付ける必要はなく、農具に重量が掛れば掛る程牽引 力は増大し、従来此種トラクター馬力では不可能視されて いた作業を容易たらしめました。

隠れていて読めないのですが、こちらはゼトアマチックの説明。 ドラフトコントロール ミックスコントロール 作業機の負荷が大きくなればなるほど牽引力が大きくなるという説明だと思います。多分。
隠れていて読めないのですが、こちらはゼトアマチックの説明。ドラフトコントロール
ミックスコントロール
作業機の負荷が大きくなると、作業機を少し持ち上げてトラクションを増やす・・・負荷が大きくなればなるほど牽引力が大きくなるという説明だと思います。多分。

「農具の土壌に喰込む力はトップ・リンク(上部連結桿) を通じて前輪を押え牽引力を増大します。」 独特の油圧装置及三点結合法を用いた所謂ファーガソン・ システムに依る農作業に於ては、トラクター車体に特別の 重量を加える事なく、農具に掛る自然の力を旨く利用する 事に依って小馬力で大馬力に相当する作業を容易にする事 が出来ます。
以下ファーガソンシステムの説明です。「農具の土壌に喰込む力はトップ・リンク(上部連結桿) を通じて前輪を押え牽引力を増大します。」 独特の油圧装置及三点結合法を用いた所謂ファーガソン・ システムに依る農作業に於ては、トラクター車体に特別の 重量を加える事なく、農具に掛る自然の力を旨く利用する 事に依って小馬力で大馬力に相当する作業を容易にする事 が出来ます。

ゼトアマチックのほうでは また作業機に加わる土壌抵抗がトップリンクを伝わって前輪を押える作用をするので、走行の安定性が増します。 みたいなことが書いてあるようです。
ゼトアマチックのほうではまた作業機に加わる土壌抵抗がトップリンクを伝わって前輪を押える作用をするので、走向の安定性が増します。

みたいなことが書いてあるようです。

ゼトアトラクターのほうが10年近く若いですから、カタログの文句もあっさりと簡略化されています。そして、ファーガソンシステムでは「システム」であった機構の名前も、「ゼトアマチック」と「マチック」が付けられています。

「マチック」というとautomatic

自動的とか自動的に作動する機械や装置。自動拳銃や自動変速装置など。

かたや「システム」というと

多くの物事や一連の働きを秩序立てた全体的なまとまり。体系。もっと狭くは、組織や制度。

受け取る僕のイメージとしては、「マチック」は〜的というほんわかとしたムード、対して「システム」はかっちりとしたまとまった機構というイメージ。モンロー的、ゼトア的、もっというと日本語の「式」に相当するかもしれません。

モンロー式、ゼトア式、インプル式・・・曖昧で何を指しているかよくわからない日本人である僕にピッタリの表現が「マチック」だとわかります。やっぱり日本人は「マチック」だ!

その後日本の農機では、モンローマチックを筆頭に「マチック」が優勢になってしまいましたし、デヴィット・ブラウンだってセレクタマチックやインプルマチックで「マチック」を採用しています。この勝負、農機の世界では「マチック」の優勢勝ちといったところなのでしょう。

長々とマチックの話をしてしまいました。もう一つ、このページの突っ込みどころはこの絵です。 「ちょっとどうしたの?」というくらいのやる気の無さ・・・リンケージドローバーなんか「なんで絹さやの絵が載ってるの?」などと思っちゃいましたもん。でも、コンプレッサー、便利そうだな・・・
長々とマチックの話をしてしまいました。もう一つ、このページの突っ込みどころはこの絵です。
「ちょっとどうしたの?」というくらいのやる気の無さ・・・リンケージドローバーなんか「なんで絹さやの絵が載ってるの?」などと思っちゃいましたもん。写真を撮ったけどうまく行かなかったのかな・・・コンプレッサー、便利そうだな・・・

ゼトア3511 種類ディーゼル 冷却方式 水冷 サイクル数 4 シリンダー数 3 内径×行程(mm) 95×110 総行程容積(cc) 2,340 圧縮比 17:1 出力(ps) 37.0 PTO回転数主軸2000rpm モータースピード rpm 542 PTO回転数主軸2000rpm グラウンドスピード rpm 226〜1211 PTO回転数主軸2000rpm グラウンドスピード左回転 rpm 297 定格回転数(r.p.m) 2,000 車両総重量(kg) 1,530 全長(本体のみ・mm) 3,266 全巾(標準状態・mm) 1,652 全高(mm) 1,935 ホイールベース(mm) 1,918 最低地上高(mm) 400 ゼトア4511 種類 ディーゼル 冷却方式 水冷 サイクル数 4 シリンダー数 4 内径×行程(mm) 95×110 総行程容積(cc) 3,120 圧縮比 17:1 出力(ps) 49.5 PTO回転数主軸2000rpm モータースピード rpm 542 PTO回転数主軸2000rpm グラウンドスピード rpm 226〜1211 PTO回転数主軸2000rpm グラウンドスピード左回転 rpm 297 定格回転数(r.p.m) 2,000 車両総重量(kg) 2,035(多分) 全長(本体のみ・mm) 3,555 全巾(標準状態・mm) 1,790 全高(mm) 1,970 ホイールベース(mm) 2,125 最低地上高(mm) 436
次のページが気になってしまいますが・・・ゼトア3511
種類 ディーゼル
冷却方式 水冷
サイクル数 4
シリンダー数 3
内径×行程(mm) 95×110
総行程容積(cc) 2,340
圧縮比 17:1
出力(ps) 37.0
PTO回転数主軸2000rpm モータースピード rpm 542
PTO回転数主軸2000rpm グラウンドスピード rpm 226〜1211
PTO回転数主軸2000rpm グラウンドスピード左回転 rpm 297
定格回転数(r.p.m) 2,000
車両総重量(kg) 1,530
全長(本体のみ・mm) 3,266
全巾(標準状態・mm) 1,652
全高(mm) 1,935
ホイールベース(mm) 1,918
最低地上高(mm) 400

ゼトア4511
種類 ディーゼル
冷却方式 水冷
サイクル数 4
シリンダー数 4
内径×行程(mm) 95×110
総行程容積(cc) 3,120
圧縮比 17:1
出力(ps) 49.5
PTO回転数主軸2000rpm モータースピード rpm 542
PTO回転数主軸2000rpm グラウンドスピード rpm 226〜1211
PTO回転数主軸2000rpm グラウンドスピード左回転 rpm 297
定格回転数(r.p.m) 2,000
車両総重量(kg) 2,035(多分)
全長(本体のみ・mm) 3,555
全巾(標準状態・mm) 1,790
全高(mm) 1,970
ホイールベース(mm) 2,125
最低地上高(mm) 436

エンジンはユニット型のようになっているので、全部ボア・ストロークが95×110になっているんですね!6気筒エンジンもあるのでしょうか・・・
エンジンはユニット型のようになっているので、全部ボア・ストロークが95×110になっているんですね!6気筒エンジンもあるのでしょうか・・・
ネットでゼトアのエンジンのカタログを見つけました。標準でエアコンプレッサーがついてるのでしょうか???
ネットでゼトアのエンジンのカタログを見つけました。標準でエアコンプレッサーがついてるのでしょうか???
農機だけでなく、建設機械などにも搭載されていたようですね!
農機だけでなく、建設機械などにも搭載されていたようですね!

今日はこんなところです。ではまた明日!

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“システムとマチックのせめぎ合い。60年代のイセキ(ZETOR)TZ5511/TZ4511/TZ3511「昔のカタログ」” への6件の返信

  1. 山葵さん こんにちは

    汎用性があるってことは、危険性もあるってことで、似たような製品はみかけません。 なんだか社会全体が軟弱になっていくような気がします。

    汎用性=危険
    なるほど・・・そうかもしれません
    逆さにして使えないようになっていたり、「ここにしかはまらない」という構造、所謂「バカよけ」な作りにしておけば変な使い方をされない分、安全ですよね。
    流用が効かないというのは、使い手には不経済ですが、全体の経済ではモノが売れるということで経済的で好都合なのかもしれませんね・・・
    世の中が軟弱になると専用工具、専用器具、安全装置ばかり増えて、場所はとるし困ってしまいます。安全装置も複雑過ぎて、存在を知らないで使うと却って危険な感じすらしますし・・・。

  2. 輸入車のジャッキってなかなかユニークですね。国産車だとパンタグラフみたいな形で
    統一されていますから、偶然出会ったオモシロジャッキは印象に残ります。
    某ドイツ車のジャッキって、絶対に他用途使用できないデザインだったりしてビックリ!

    パンタジャッキやダルマジャッキってネジで動作するので姿勢を気にせず使えて便利です。
    イセキチェリートラクターに標準装備されていたジャッキがボルボに似ていると思われます
    ハンドルで伸縮する足に枝が2本付いているだけの(物干し竿の足)のようなスタイルですが
    好きなところに自由に枝を引っ掛けてお手軽に持ち上げられる便利なジャッキでした。
    汎用性があるってことは、危険性もあるってことで、似たような製品はみかけません。
    なんだか社会全体が軟弱になっていくような気がします。

  3. 山葵さん こんにちは

    排ガスで巨大な風船を膨らませて車を持ち上げるジャッキもありました。

    あ!それ、持ってました持ってました!!!
    あれーーー???どこ行っちゃったのかなあ・・・捨てちゃったかな
    丈夫な袋で、どんどんふくらんで、持ち上がったら蹴飛ばしてクルマを移動させるんですよね
    ぬかるみではジャッキをかけづらいのでできたものだと思いますけど
    けっこう角材や板材を使えばジャッキは掛けられるのでいつの間にか使わなくなっちゃいました

    そういえばボルボの純正だったかサイドシルに外から掛ける
    長い棒状のジャッキも持ってたのですが、それも捨てちゃったかなあ・・・
    あれは今でも使いたいときがあります

    引き出しの多さがポイントというのは確かに言えますね
    最近部品取り用に置いておいた30年前のバイクを何となくいじり始めたので切に思います

  4. あっ!これです!このゴムベローズがゲットできれば!修理も簡単です。ですが
    適当なチューブでパッチを当てたり荷車の小さいチューブを無理やり捻じ込んだり
    リフトケースとの間に圧縮バネを嵌め込んだりするのも上質なミッションなんです(物好き)

    どんなトラクターでも、産業機械でも、形のある部品はいつか供給がストップします
    あれは使えそうだぞ?これはイケるかな?最悪作っちゃうならどうする?こんな感じで
    引出をどんどん増やしていくほかに道は無いので、毎日が新しい発見とチャンスの遭遇です。

    バイクの空気入れで思い出しました、プラグを抜いて取り付けれるなんちゃってコンプレッサー
    ってアイテムが大昔にありました。エンジンの呼吸を空気入れに使ってしまう大胆な。
    排ガスで巨大な風船を膨らませて車を持ち上げるジャッキもありました。
    泥濘で通常のジャッキが効かない状況で威力を発揮できるとかなんとか。
    みんなどこにいっちゃったのでしょうか・・・

  5. 山葵さん こんにちは
    コンプレッサー、なにか凄い事に使うのかと思えば、一番思いつくような事に使っていたのですね
    確かに空気を抜くのはいいですけど、入れる時に「どうする?」ってなりますから
    僕も山の中でタイヤの空気を抜いて、帰りの林道でパンクした事が何度もあります
    シートのエアサス、ゼトアマチックの謎の動き、バルブクリアランスの調整、どれも興味深いです
    エアサスはちゃんと空気を入れるバルブが付いているのですね!
    ボールみたいな形をしているのかと思ったら、自転車のチューブを重ねたような形をしていました。

  6. 5シリーズの場合だとコンプレッサーはオプションだったと思われます。
    シートがスプリングだったり、当時エアブレーキのトレーラーはレアな存在でした。
    今でもレアな存在であることは変わりないのですが。
    7シリーズからシートがエアサスになったので標準化されたようです。
    ちゃんと空気入れ用ホースも付属されていました。
    タイヤの空気を抜くとゴムが地面にへばりついて接地面が増えトラクションが稼げます。

    シートのエアサスですが当然劣化してパンクします。簡単なパンクならシーリングボンドで
    補修できますが、最終的には圧縮バネを挟み込んで応急処置を終了させていました。
    軽自動車のクラッチのダイヤフラムで代用できるかも???と構想中です。

    地面を引っ掻いて均すジョレンの巨大バージョンみたいな作業機があります。
    通常、ハイドバン(排土板)とかグレーダーと私の近所では呼ばれています。
    タカキタとかではカタログにさりげなくラインナップされている作業機です
    庭先や農道の補修や畑のデコボコを補修したり除雪に活躍してくれます。
    これをゼトアに適当に装着して引き摺り廻すとなぜか絶妙に綺麗に仕上がる
    不思議な現象が起こりますが、勝手にゼトアマチックの色々な機能が
    作動しているのかと思われ・・・

    単気筒ごとにシリンダーヘッドがわかれているので確かに修理はピンポイントでできますが
    バルブクリアランスを頻繁に調整することになります。それも上質なイベントと思っています。

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