1988年、「さなえ」は「SANAE」になったが、クボタは「めぐみ」と「ゆたか」を始めていた。

1971年に「さなえ」が生まれ、「伊吹(ヤンマー)」「わかくさ(サトー)」「春風(クボタ)」「すくすく(三菱)」とフォロワーを生んだ田植機の愛称・・・

1988年には「日本名ダサーい」とばかりに一斉に横文字表記、もしくは横文字のカタカナ表記に変わっていた・・・というのが前回までの愛称のお話でした。

前回までのお話。

今日は、トラクターと田植機はそうやって口を拭ってしまいましたが、それ以外はどうだったのか?というお話です。

1988年、クボタはバインダーやハーベスタでそれをやっていた

思わず「おお!」と、声を上げてしまったのはNさんのカタログコレクション。クボタの総合カタログに「めぐみ」と「ゆたか」の名前を見つけてしまいました。

まだダサいはずの人の名前、残っていたんです。

バインダーが「めぐみ」で、ハーベスターが「ゆたか」です。なんと円内にはめぐみとゆたからしき少女少年の写真まで・・・まるで17年前の「さなえ」と桜田淳子さんの関係です。
バインダーが「めぐみ」で、ハーベスターが「ゆたか」です。なんと円内にはめぐみとゆたからしき少女少年の写真まで・・・まるで17年前の「さなえ」と桜田淳子さんの関係です。
これですね。
これですね。

バインダーとハーベスターは17年前の手法で行けるほど「枯れた」技術、もしくは市場と捉えられていたのかもしれませんね。

実際に名前が本体に書かれていたかどうか探しました。(まずはめぐみ)

実際に「MEGUMI」などではなく、ちゃんと「めぐみ」と、本体に書かれていたかどうか探してみました。

ネットで写真を探してきました。確かに「めぐみ」と書かれています。 でもバインダーはBinderだし、トータルではBinder 自動ひも返し めぐみ・・・と、親切なんだか不親切なんだかよくわからない表記になっています。
ネットで写真を探してきました。確かに「めぐみ」と書かれています。 でもバインダーはBinderだし、トータルではBinder 自動ひも返し めぐみ・・・と、親切なんだか不親切なんだかよくわからない表記になっています。

では、ゆたかはどうでしょう?

こうなると「ゆたか」も楽しみです。探してみました。

ネットで写真を探しました。これはカタログに載っているものより新しいですが、やはりHarvester RH450 ゆたか・・・と、書かれています。
ネットで写真を探しました。これはカタログに載っているものより新しいですが、やはりHarvester RH450 ゆたか・・・と、書かれています。

バインダーとハーベスターを買う層は横文字の苦手な高齢者、トラクターやコンバイン(この頃コンバインはSky Roadです)などの大きめの機械を買う層は若い人達・・・と踏んだのかと思いましたが、BinderやHarvester表記ですから「そうでもないのか」と思い直してしまいました。

同じようなこと、他社でも起きていました

売れ筋は横文字。周辺のものは親しみ?やすい日本の名前・・・こういう現象は他社でも起きていました。同じ1988年のシバウラ総合カタログを見てみます。

トラクターは「スタイガー」なんですが・・・
硬派の機械メーカーだと思っていたシバウラにお姉さんが登場していますが、それをおいて注目したいのは「木の下くん」「高木くん」「土作くん」の「くんくんトリオ」。項派だと思ったのは僕の思い込みだったようです。
硬派の機械メーカーだと思っていたシバウラにおねえさんが登場していますが、それをおいて注目したいのは「木の下くん」「高木くん」「土作くん」の「くんくんトリオ」。硬派だと思ったのは僕の思い込みで、「おねえさん」と「〜くん」の愛称は、一通り製品が出そろい差別化の難しくなった農機業界全体を巻き込んだ大きなムーブメントだったようです。

果樹園作業用の低いトラクターは「スタイガー」ではあるものの、愛称が別にあって「木の下くん」。管理用なのか車高の高いハイクリ「スタイガー」は「高木くん」。

また、ロータリーにまで「土作くん」と、名前を付けてしまっています。「STIGER 木の下くん」「STIGER 高木くん」・・・スカしてずっこける・・まさにこれは「Binder めぐみ」と同じような手法・・・

きっとこれは効果的だったのでしょう、「くん」はこの後も生き残っていますよね。

おまけ。「くん」に「ちゃん」

これは元祖エコネット元気くん。苗いじめのローラーですね。これは「くん」がついている上に、知的財産権の発達していなかった頃から名前が重要だった和菓子業界でおなじみの「元祖」つきです。
これは元祖エコネット元気くん。苗いじめのローラーですね。これは「くん」がついている上に、知的財産権の発達していなかった頃から名前が重要だった和菓子業界でおなじみの「元祖」つきです。
茨城県水戸市常澄産コシヒカリ 苗
このように使うものです。
こまきちゃん
こまきちゃん
箱まきちゃん
箱まきちゃん
らくまきちゃんR これなどは「〜ちゃん」+Rです。「くん・ちゃん」にもインフレが始まっています。これがそのうち「らくまきちゃんZ」とか「らくまきちゃんEX」とか「らくまきちゃんROYAL」などに繋がっていくヤツです。
らくまきちゃんR これなどは「〜ちゃん」+Rです。「くん・ちゃん」にもインフレが始まっています。これがそのうち「らくまきちゃんZ」とか「らくまきちゃんEX」とか「らくまきちゃんROYAL」などに繋がっていくヤツです。

農業機械を人に寄せる手法だった「親しみやすい名前を付ける」行為、農業機械が進化して姿かたちがカッコよくなってしまって、それがダサく見えたとしてもやっぱり有効だったのです。

人に見せる部分はカッコよくスカして・・・でも、自分だけには親しみやすく・・・

カッコいい機械の代表でもある高価なスーパーカーにだって、個人的に「ポルちゃん」とか「ランちゃん」などと名前を付け密かに呼んでいる人、いるに違いありません。

今日はこんなところです。また明日!

上の記事とゆるく関連しているほかの記事:

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です