岡山の常定工作所製農業用発動機(昭和2年〜昭和32年)ナショナル号の始動

Sさんのところで見たものが続きます。今日は岡山の常定工作所というところで作られていた、ナショナル号という農業用発動機です。

写真を拡大して名前がわかったTSUNESADA IRON WORKSの「NATIONAL」発動機。トレードマークの菱形の中にK.Tは創業者の常定喜市さんのイニシャルでしょうか・・・
写真を拡大して名前がわかったTSUNESADA IRON WORKSの「NATIONAL」発動機。トレードマークの菱形の中にK.Tは創業者の常定喜市さんのイニシャルでしょうか・・・

 

岡山の常定工作所製農業用発動機(昭和2年〜昭和32年)ナショナル号の始動

↑ちょっと長くて1分50秒ほど。デコンプが動く音?ネジを巻くような音が印象的でした。

 

岡山の常定工作所製農業用発動機(昭和2年〜昭和32年)ナショナル号の始動
ナショナルと書いてあるので、あの松下電器の農業用発動機科と思いましたが違いました。発動機の世界は発動機の名前が重要でメーカーはあまり関係がなかったのかもしれません。車であれば車種を表しているのでしょう。トヨタの「クラウン」とかポルシェの「カイエン」みたいなものでしょうか。

なぜ愛称とかブランド名があるのか考えてみると、「クルマ、何に乗っているの?」と聞かれてあまり「トヨタ」とは答えないですよね。「トヨタ」って答えたら「どんなトヨタ?」ってさらに聞かれそう・・・そんな時楽です。

たくさんのクルマがあり、絞り込めないくらい選択肢が多いときは、かなりその姿がイメージできるように、愛称とかブランド名があるんですね。

でも、自分の持っているクルマなど、目の前にあったり、選択肢がかなり限定される時に「うちのトヨタ乗って行っていいよ」などと大雑把にメーカー名で言ったりしても、「ああ、あのクラウンだな」と理解できる・・・そんな使い方のためにあるのかもしれませんね。

岡山の常定工作所製農業用発動機(昭和2年〜昭和32年)ナショナル号の始動
そのナショナルと書かれたカバーを開けるとこんな感じ。動画の中でも触れられていますが、このコンロッドの溝を伝って点滴されたオイルがメタルに送られるしくみになっているそうです。右手前にはマグネトーも見えますね。
岡山の常定工作所製農業用発動機(昭和2年〜昭和32年)ナショナル号の始動
以前調べた国産電機のマグネトーです。

『マグネトーって・・・そうだったんだ!・・・芝浦ガーデントラクタ「撮りトラ」』ではじめて遭遇したマグネトー。ちょっとだけ引用すると・・・

あるわー「国産電機株式会社」(www.kokusandenki.co.jp/‎)
あるわー「国産電機株式会社」(www.kokusandenki.co.jp/‎)

「国産電機株式会社」は、1931年(昭和 6年)7月、航空機用マグネト(エンジン点火用高圧磁石発電機)の国産化を使命とし、旧東京市麹町区に設立され、現在は静岡県を拠点にしている会社のようでした。

理念がものすごくストレートに社名になっている会社です。

国産電機のロゴ・・・まさに、シバウラのマグネトーに使われているものについているロゴと一緒です。ビンゴ!
国産電機のロゴ・・・まさに、シバウラのマグネトーに使われているものについているロゴと一緒です。ビンゴ!

こんな感じでした。マグネトーって昔のガソリンエンジンに付いていたディストリビューターとどう違うんだろう。マグネトーのほうが四角くて金属部分が多くてカッコいいけど・・・

岡山の常定工作所製農業用発動機(昭和2年〜昭和32年)ナショナル号の始動
プラグコードはこんな風に取り付けられています。真鍮のネジがオシャレ!
岡山の常定工作所製農業用発動機(昭和2年〜昭和32年)ナショナル号の始動
Sさんが指差しているのがメインジェットの番手を変えるネジだそうです。その奥にアクセルがありがとうございます、メインジェットと同じような右側ののネジは・・・なんでしょう・・・
あ!そうそう。有限会社常定工作所、しなやかに激動の時代を泳いで業態を変え現在も営業していました。(http://www.tsunesada.co.jp/)それに、ナショナル号のDNAもちゃんと残っている感じですごくいいです。
あ!そうそう。有限会社常定工作所、しなやかに激動の時代を泳いで業態を変え現在も営業していました。(http://www.tsunesada.co.jp/)それに、ナショナル号のDNAもちゃんと残っている感じですごくいいです。

「どうやって削るんだろう」と思うような大きく複雑な金属の加工物や、石の加工、それからもの作りのチャレンジなど、工夫ズキ鍛冶屋さんの多い岡山の血がここにも流れている・・・そんな気がします。

そして、サイトの中にナショナル号の記事も見つけました。(昭和2年〜昭和32年の間、作られていたのかな?)この写真、ビール瓶を2本立て、その上でナショナル号を運転している写真なのだそうです。振動が少なく、バランスが良いということをデモしているのだと思います。これはすごい! みんなたまげたでしょうねえ・・・
そして、サイトの中にナショナル号の記事も見つけました。(昭和2年〜昭和32年の間、作られていたのかな?)この写真、ビール瓶を2本立て、その上でナショナル号を運転している写真なのだそうです。振動が少なく、バランスが良いということをデモしているのだと思います。これはすごい! みんなたまげたでしょうねえ・・・

比較対象用にお隣にあったキタガワの発動機

比較対象におとなりのキタガワ発動機。調べたのですがパッとはこのキタガワ(会社名か、それとも「ナショナル号」のような愛称かわかりませんが)出てきませんでした。でもきっとどこかにこの会社のDNAは存在しているはずですよね。
比較対象におとなりのキタガワ発動機。調べたのですがパッとはこのキタガワ(会社名か、それとも「ナショナル号」のような愛称かわかりませんが)出てきませんでした。でもきっとどこかにこの会社のDNAは存在しているはずですよね。
キタガワの発動機。ナショナル号と比べるとコンロッドに溝がないことがわかります。この発動機のメタルの潤滑は「偶然オイルがかかる」感じでなされていたのかな?
キタガワの発動機。ナショナル号と比べるとコンロッドに溝がないことがわかります。この発動機のメタルの潤滑は「偶然オイルがかかる」感じでなされていたのかな?
そしてこちらのマグネトーは三菱製。
そしてこちらのマグネトーは三菱製。
プラグコードの取り付けはこんな感じ。
プラグコードの取り付けはこんな感じ。

どれも似たような農発ですけど、細かく見ると違うものですね。

真鍮のオイル点滴機(何か名称があるのでしょうか?)はすばらしい!特に上に付いている調整ネジ、クリック感がありそうでいいなあ。
真鍮のオイル点滴機(何か名称があるのでしょうか?)はすばらしい!特に上に付いている調整ネジ、クリック感がありそうでいいなあ。
プラスチック製では存在感がないし、なぜだか愛せない。そんな気がします。どうしてなのかはわかりませんが。
プラスチック製では存在感がないし、なぜだか愛せない。そんな気がします。どうしてなのかはわかりませんが。

最後にこれまで集めた農発の再生リストを貼っておきます

上の記事とゆるく関連しているほかの記事:

“岡山の常定工作所製農業用発動機(昭和2年〜昭和32年)ナショナル号の始動” への8件の返信

  1. 愛読者さん おはようございます

    製品の写真集を作品集と呼んでいるんですものね
    一品ものということなのでしょう

    結局回らなかったけどエンジンを作ってみるというのがすごいです
    (まったくウンともスンとも言わなかったのか、回ったけど使いものにならなかったのか気になりますが)
    やっぱりナショナル号の血が流れているんでしょう
    ますますおもしろいです。岡山

  2. みみずくさん おはようございます

    すみませんっ!なんだかできの悪い生徒に講義する格好になって恐縮です
    ムダに火が飛んでいたんですね!
    だから4気筒でも2つのコイルでいける・・・なるほど・・・そういうことでしたか
    ありがとうございます

  3. >有限会社常定工作所、しなやかに激動の時代を泳いで業態を変え現在も営業していました。

    「製品一覧」じゃなくて「常定工作所の作品集」っていうあたりから、オーダーメイド品を多く手がけている会社っていう匂いがしますね。
    http://www.tsunesada.co.jp/product/index.html

    社長がコラムに「結局回ることはありませんでしたが、何にでもチャレンジするこの精神は、私の糧になったはずです。言い訳になりますが、ちょっと時代に先行しすぎたようです。」って書いてる自作エンジンって、マツダが近年になってようやく実用化に辿り着いた「高圧縮比高効率ガソリンエンジン(SKYACTIV-G)」と同種の研究ですから、30年前だと「誰も行こうとしないくらい先」を目指した挑戦だったと思うんです。

    「世界の草刈機の4割はウチのギアボックスで動いてる(カーツ)」とか、「世界の船舶エンジンの6割はウチのカムで(ショウエイ)」とか。「世界の船の3割はうちのプロペラで(ナカシマプロペラ)」とか。。。岡山って金属加工分野の先端企業も多いんですけど、探求心旺盛な技術系の経営者が育ちやすい風土なのかも知れません。

  4. >Z1はコイル2個でディスビなしということは2気筒ずつバクハツする
    違います。
    4気筒180度クランクの場合、爆発順序にもルールがあって、
    そのルールの中で対になるシリンダーが決められます。
    で、片方が圧縮上死点の時に点火するとすれば、
    対をなすもう一方は排気上死点ですので、爆発ではなく捨て火となります。
    それが2セットで結果、クランク2回転の間に4等分180度ずつ均等に4回爆発する…と。

  5. 発動機のシャチさん おはようございます

    メインジェットの番手調整ノブ 石油用とガソリン用それぞれあるということですか!
    なるほど・・・

    ランタンみたいなオイルの点滴機、オイラーというのですね
    Dさんからも「ガラスオイラーで検索せよ」という指摘があって
    検索してみたらたくさん売っていました
    今でも使われているんですねえ・・・

  6. みみずくさん コメントありがとうございます

    ディストリビューターもタイミングをとるためにギアが付いていたり
    中にポイントが入っていたりしているみたいなので
    同じようなものかと思ったら違うんですね
    ただ電気を分ける装置でしたか

    Z1はコイル2個でディスビなしということは
    2気筒ずつバクハツするということなのでしょうね

    コイルも必要なんでしたっけ・・・
    石油発動機のコイル、今度はそれに注目して探してみます

  7. ナショナルのキャブですが、
    指先してるのが、ガソリンで奥のは石油です。
    暖気をしたらガソリンを閉めて石油側を開けます。
    それと、オイルを点滴するやつはオイラーと言います。

  8. マグネトーはエンジンに点火させる目的を持った発電機。
    そこで得た電気を昇圧させるのがイグニッションコイル。
    ここまではバイクと一緒だけど、バイクの場合はフライホイールとほぼ一体に作られているので
    フライホイールマグネトー点火と呼ばれるのは御存知の通り。
    ディストリビューター【distributor】は分配器(者)や卸売業者の意味で
    まさしくコイルにより昇圧された電気を各シリンダ(スパークプラグ)に振り分ける装置。
    昔のガソリンエンジンを例にすれば、ニッサンのL型エンジンでは4気筒にコイル1個デスビ1個。
    KAWのZ1では4気筒でもコイル2個でデスビなし。

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