コンテナの中身で脱線していましたが、日本でだぶついた中古トラクターの行き先の中で、アメリカ、特にその中でもクボタのOEM(Original Equipment Manufacturer)で農協のために作られた「ZEN-NOH」トラクターの話でした。今から15年くらい前の話です。遠くに行っちゃった話を戻します。
さて困った
なるべく在庫は持たず、中古トラクターを詰め込んだコンテナが海の上にある間くらいに全部売れてしまうような商売をしていた元締めですが、この突然の輸入差し止めでこれら中古トラクターを買った業者は困ってしまいました。鉄くずとしてしか売ることのできない在庫を抱えてしまったからです。
立入禁止と言われたら座って入ればいいんだ!
ところが、抜け目のない人はいるもので、その裁定の中はクボタの商標権を侵害したために下されていて、同じクボタでありながらOEMで農協のために生産された全農のトラクターは含まれていないことに気がついた人がいたのです。
いかついトラクターに似合わず丸くファニーな書体で「ZEN-NOH」と書いてあるクボタ製のトラクター。これはれっきとした全農ブランドのトラクターで、当時の品番の頭にあったLにZをつけてZLとしで売られていました。例えばスレートハウスにあったトラクター、L2000DTだったらZL2000DTみたいな感じにです。
それだけじゃただの屁理屈だから、座って入る理由を補強
運悪くというか良くというか、全農が1980年代初頭アメリカで取得していた商標権は1988年には切れてしまっていて、更新もされていませんでした。そして、その商標権を在庫を抱えた中古トラクター業者が1997年に取得してしまいました。
詳細はわかりませんが、当時のクボタトラクターはエンブレムが付いていたわけではなく、ステッカーがペロッと貼ってあっただけだったので、もしかしたらすべての在庫のトラクターに「ZEN-NOH」のステッカーを貼って売ってしまったかもしれません。
こうしてクボタの中古トラクターは、稼働時間が少なく比較的安い「ZEN-NOH」トラクターとして再び流通することになるのです。何だか話としておもしろかったので続きます。