一言いえば100万円(償還期間は最長二年)オイルショック下のヤンマーローン。

今日はShioikaさんに送ってもらった1974(昭和49)年1月のものと思われる、ヤンマー昔のカタログです。

1974年10月に勃発した第四次中東戦争が原因で70%高に引き揚げられた原油価格は、1974年には日本の消費者物価指数を23%押し上げたそうです。
1974年10月に勃発した第四次中東戦争が原因で70%高に引き揚げられた原油価格は、1974年には日本の消費者物価指数を23%押し上げたそうです。

そして、そのわずか2ヶ月後のヤンマーのカタログに『一滴の油を大切に!燃料報国で食料事情に奉仕するヤンマー』とカタログに入れさせる、まさにショックとなっています。

すっかり暗いスローガンなのかと思ったらそうじゃなかった

ヤンマーの社史である「豊穣無限」(ヤンマー農機20年のあゆみ)という本に何かオイルショックに関する記述がないか探したら、なかなか興味深いことが書いてありました。

第一次オイルショックと狂乱物価

中略

前年の47年には、ソ連、中国、インドをはじめ世界各国が異常気象による干ばつと水害で、農産物は世界的な凶作に見舞われていた。農産物の国際価格は急騰し、主要輸出国が輸出制限や輸出禁止をするなどの事態がはじまっていた。このため世界各国で食料への関心が急激に高まると同時に、将来展望として、世界の食料需給が危うい状況を迎えるかもしれないという議論が、やかましくもちあがった。これ以来、石油と食料は国家戦略、世界戦略物資として、政治色の強い商品となった。

「豊穣無限」(ヤンマー農機20年のあゆみ)P41

う〜ん・・・戦略物資である石油を使い、戦略物資である食料をつくる・・・

まさにその認識にぴったりのスローガンが『一滴の油を大切に!燃料報国で食料事情に奉仕するヤンマー』です。

唐突なように感じたスローガン、実はとてもリーズナブルなものだったというわけです。

そして最初のページです。 僕はこのヤンマーローンというのに引っかかりました。
そしてそのカタログ最初のページです。 僕はこのヤンマーローンというのに引っかかりました。これがなかなかおもしろいシステム。

見にくいかもしれないので書き出します。

全国の農家のみなさまに、一日も早く生産性の高い(ヤンマー製品)を、ご利用いただこうと〈ヤンマーローン〉を実施しています。〈ヤンマーローン〉は〈ヤンマー製品〉をご購入の際、ヤンマーが保証人となって、今すぐヤンマー農業機械が使用でき、お支払は下表の通り、ご都合の良い時期にお支払いください。

●無担保です
ヤンマーが保証人となっていますから、土地や債券などの担保は不要です。

●ご融資は〈4万円から50万円まで〉
4万円以上、50万円までを千円単位でご融資します

●お申し込みは
ヤンマーの特約店で、一言〈ヤンマーローン〉でと、お声をおかけください。一切の手続きはヤンマー特約店が行ないます。


これで最長2年の間にお金を返せばよいということでした。これって、毎月いくら・・・とかではなく、ある時に払えばいいんですよね?

おもしろいなあ

調べてみると1974年の大卒初任給は78,700円。今の価値に変換すると165,570円だそう。つまり、だいたい倍ということですから、借りられる最高50万円は今でいうと100万円。

100万円、あるとき払いの無担保で借りられるというわけです。

ある意味土地に縛られている農家の人たち対象だから、取りっぱぐれはないのかもしれませんがオイルショックなのに太っ腹だなあ・・・と思っていたら、先ほどの「豊穣無限」にこんな記述がありました。

業界、活況を呈す

世界中を一夜で駆け抜けたオイルショックで、国内のほとんどの産業はたちまち減速経営に突き落とされたが、ひとり農業だけは食料自給の責任を担う意気込みで活力を取り戻していた。ちょうど高性能農業機械がさながら百花繚乱といえる状況で普及しだしていた矢先のことであった。新形農業機械の大量需要が一度に噴き出してきたような感であった。

「豊穣無限」(ヤンマー農機20年のあゆみ)P42

「百花繚乱」「大量需要が一度に噴き出し」ガッポガポのウハウハな感じがものすごく出ています。

心はニヤニヤ、しかし表向きには「国のためにやっていますよ」というテイストで『一滴の油を大切に!燃料報国で食料事情に奉仕するヤンマー』となる・・・まさに必然ですね!

戦略物資を効率良く作ってもらうために、農業機械をたくさん売る。

そのためには手元資金が怪しくてもあるとき払いで買ってもらう・・・〈ヤンマーローン〉

売り時とローンはセットですねぇ

すっかりヤンマーのスローガンが胸に落ちました。今日はこんなところです。また明日!

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