毎日ルート概要を見てどんなところか想像しながら見ているわけですが、どんなに状況が大変でも、イージーでも、走るべき道はただそこにあるだけであり、だまって襲いかかったりはしません。
しかも問題点はマップに記載され、ブリーフィングでも注意されているわけです。それでも競技者は全員長いSSの間に一回はミスを犯してしまう・・・一瞬の気のゆるみ(景色に目を奪われるということも含まれます)、トイレに行きたいのをガマンしていたり、先行者に追つき抜けそうな時・・・立ち止まり考えていれば防ぐことのできるミスです。でも、それはできません。
ミスの元を辿れば「欲」から始まっているのかもしれません。もしかしたらスポーツ全体にいえることなのかもしれませんけど。タイムを削りたい、ライバルに追いつきたい・・・そういう欲と、それから来るリスクを天秤にかけ、石ころ一つ、溝一つに至るまで、一瞬一瞬、短い時間で判断し続け、クルマのコントロールをしてるのかな?・・・そんなふうに思います。
今日はその自分の欲との戦いが激しくなりそうです。
ETAPE-9 アントファガスタ→イクイケ
トランスポートセクション:9km スペシャルステージ:556Km
気をつけろ!(スリルは保証付き)
南米大陸を北上するラリーは、海から山へ、そしてまた海へと競技者は休む間がありません。これらはその特徴と風景によって全く違う対応を競技者に迫ります。
最初のSS、競技者は渓谷の底いのフラットなルートをとり、ふっかふかのフェシュフェシュに沈みます。次のSSはドライバーとコ・ドライバーに、目印のないGPSによるウェイポイント通過を要求して、そのナビゲーション能力を試します。
そして、その報酬はといえば、2010年のダカールラリーでフューチャーされた太平洋岸のイクイケへ向かっての崖下りです。
これもわかりにくいですが、「フェシュフェシュに沈みます」沈むって言い切っちゃってるところが恐ろしいです。沈むっていうんだから沈むんでしょう。
色々な国で色々に言われていますが、フェシュフェシュというのは、小麦粉とかセメントみたいな土の細かい粒子が空気を多く含んで、それが一時的に固まっている状態と言うか、そんな道のことです。
人間が歩いたりする分には別にどうってことのない感じですが、クルマや単車で走ると沈んで、ふっかふかの土だか砂だかセメントだか小麦粉だかわからないものがわらわらと掘れてどんどん出てくるのです。
一台通れば一台分、二台通れば二台分、どこまで深いのかわからないセメントの底なし沼です。ですからできるだけ誰も通っていないところを走らなければならず、あっという間に峡谷は轍だらけになってしまうでしょう。
そして言ったん舞い上がったホコリは渓谷の底に30分以上も漂ったまま・・・粉っぽいわパワーは喰われるわまっすぐ走らないわの最悪の地形です。オーストラリアでは「ブルダスト」中国は黄土高原の「黄土」(春になると日本までやってくる黄砂のふるさとです)なんかもこれじゃないかな・・・なんて想像してます。
そして難しいナビゲーションのご褒美は谷落としと、欲の克服の修行は容易じゃありません。
さて、チームランドクルーザー所属の#339三橋 淳 選手は、そのフェシュフェシュはとうに抜けて、ナビゲーション能力を試されるところに差し掛かっていて、WP8を23番目に通過して今日も順調のようです。