ストリームラインと共に消え去ったエスプリ。SFVトラクター Vierzon super 203「撮りトラ」
今日は雑誌からのヒントで・・・世が世なら僕が一番好きになったであろうトラクター、フランスのど真ん中あたりにあるビエルゾンという町のSFVまたはSociété Française de Materiel Agricole et Industrielという会社のトラクター、Vierzon super 203「撮りトラ」です。

以前ISDE(1913年に始まった古いオフロードバイク競技、International Six Days Enduro)帰りのお友達からお土産に貰った古いトラクターの雑誌です。外国にはこういう雑誌があるっていう事がすごいです。(僕はあまり外に出歩かないから気がつかないだけで、もしかしたら日本にもあるかもしれませんが)今日はこの雑誌の中で一番目についたトラクターの事を少し・・・もし、生まれて一番最初にこのトラクターを見たら、誰もがきっと好きになってしまうであろうというトラクターです。
初めて受けた衝撃TB23

それまで当然トラクターというものがあるとは知っていましたが、初めてはっきりとトラクターというものを意識したというか「見た」というのは、今から8年前のこのトラクター、イセキポルシェTB23でした。それ以来ずいぶんはまり込んでしまったのですが、たくさんトラクターを「見る」ようになっても、一番好きなのはやっぱりこのポルシェ。まるでタマゴから孵ったヒナが一番初めに目にしたものを親だと思うみたなものです。ポルシェとどこか同じテイストがあるのか、もしSFV Vierzon super 203を一番先に目にしていたら、これを一番好きになったろうなぁ・・・そんな感じなんです。
SFV Vierzon super 203

前置きが長くなってしまいました。雑誌の中で衝撃を受けたのはこのページです。フランス語は全然わからないのでグーグル先生に聞きながら見てみると、SFV Vierzon super 203は1958年〜1959年、スタンダードタイプがプジョー4気筒1290ccガソリンエンジン18馬力(1958年)20馬力(1959年)DタイプがドイツのNormagが提供する2ストロークディーゼル単気筒エンジンを搭載していました。電気的にトップリンクを動かすファーガソン・システム的な機構を持っていたようです。(多分)「これのどこに衝撃を?」と言われれば、やはりそのスタイリングでしょう。1958年〜1959年というと、ストリームライン流行の終わりぐらいなのでしょうか?日の出ハンドトラクターとか、レイモンド・ローウィさんのファモールとか、きっとポルシェ・トラクターなどもその影響を受けていますよね? 「遅くても、走らなくても流線型」と言う時代のものになぜか惹かれてしまいます。
コマツ・ノルマーグNG22

以前「土の館」で見た、コマツ・ノルマーグNG22です。キャプションによると
機種名:ノルマーグトラクタ 形式・仕様:NG22型 22馬力 製造社・国:ノルマーグ社 ドイツ 製造年度:1956(昭和31)年 使用経過:当時、小清水町では書記の導入で、小松製作所から94万円を3年払いで購入した。 モーアは町内に2台しかなく、寝る暇もなく働いたという。 後に水田を作りたくて士別市に移住。1993(平成5)年まで使用していた。
となっています。
SFVという会社

工夫好き鍛冶屋さんと機械好き農家、工夫好き大工さんと機械好き農家、農業機械メーカーはいつモこのようななところから始まりますが、SFVも大工修行をした息子と小農の父親のお悩み解決から始まります。セレスティン・ジェラールさんという人が、父親のために脱穀機を作り、1825年に起こした小さな会社。その会社は蒸気機関を経て1930年代からトラクター製造を始めます。それからわずか30年、ラインナップで15〜16ラインのトラクターを出してCASEに売られ、1960年にはSFVという会社はなくなってしまいます。そのトラクターラインナップの中で最後の輝きを放っていたのが前述のSFV Vierzon super 203というわけです。
エンジンフードはプラスチック!

左はディーゼルエンジンのSFV Vierzon super 203にはS、D、Eの3タイプあって、これは203Eだそうです。Eタイプはぶどう畑で使われるsmalspoorのようなタイプ。エンジンはディーゼルのようですね。この特徴的なストリームラインのエンジンフードですが、先日のFORDのオデコのようなFRPかどうかはわかりませんが、なんとプラスチックなのだそうです! これがアルミの叩き出しだったらもっとファンが増えたと思うのですけどね!
ぶどう畑のsmalspoor

アイヒャートラクターのおめめぱっちりの小顔ちゃん。おもちゃみたいに寸詰まり。とってもかわいらしい。どうもトラクターには「smalspoor tractor」というカテゴリがあるようで、調べてみると狭軌のとか狭いなどという意味らしい。どうもこれこそブドウ畑で働くマシンみたいなんです。

おいおい!こんなにしてどうすんだよ!という感じ。究極のアイヒャー・・・ブドウ畑にもほどがあります。これはほとんどの人が欲しいでしょう。
ストリームライン

PPR-S1という蒸気機関車、蒸気機関車の速度や車両の重さだと、あまり空力は関係なさそうですが、「そんな感じ」ってのが大切。このデザインもファモールトラクターをデザインしたレイモンド・ローウィさんなんだそうです。
ポルシェだってストリームライン?

Porsche-Allgaier P312 1954年製 これもポルシェトラクターです。ブラジルのコーヒー園で使われるために作られたみたいで、別名「コーヒートレイン」コーヒーを傷つけないようにこのような形になったそうです。ローウィさんデザインのPPR-S1という蒸気機関車に共通した雰囲気がありますよね!
四角いデザインのトラクターは好きだし、実際に見たことがありますが、こういったストリームラインのトラクターは古過ぎて実際に見たことがありません。それだけに新鮮で新しく感じるのかもしれません。
今、空力を考えてデザインしたらもっと違う形になるでしょうし、純粋にカッコだけこのようにするという合理的理由は既に消え失せています。
古いけど新しい、でも時代遅れ・・・1960年にストリームラインと一緒に消えてしまった、フランスのエスプリ(何となく意味もよくわからす雰囲気で使ってます)はもう二度と現れることはないでしょう。
ですから、今日は「シーン」と寂しい感じに包まれている気分です。
というわけで、また明日!