突っ込みどころナシ。D1616/D2016/D2416/D2816 ランツ・ブルドッグ「昔のカタログ」その2

トラクター狂さんに送っていただいたD1616/D2016/D2416/D2816 ランツ・ブルドッグ「昔のカタログ」続きです。

昨日まではこんな話でした

D1616/D2016/D2416/D2816 ランツ・ブルドッグ「昔のカタログ」
表紙の絵の話でした
同じ向きの写真がなかったのでこの写真を切り抜いて反転しはめ込んでいます。どうです?
同じ向きの写真がなかったのでこの写真を切り抜いて反転しはめ込んでいます。

写真とイラストの違いが凄い!という話でした。写真の印象は強く、あまりにもリアル。ですからそこで思考停止してしまって想像力が働かない感じです。実機を見に行ったときも「ああ、これね。カタログで見たわ」なんてことになりかねません。

そこへいくとイラストの場合は、大体の大まかな形や雰囲気をカタログで掴むことはできますが、仕上がりなど実車については想像するしかありません。だから、実機を見たときも感動があるんじゃなかろか・・・というところまででした。

さて続きです

まずは仕様書から。「あらゆる農業経営に好適な馬力が選べます。」とあります。
まずは仕様書から。「あらゆる農業経営に好適な馬力が選べます。」とあります。

単位が漢字なので苦労しちゃいましたが、引き写してみます。

ランツ・ブルドッグ D1616
機関:水平単気筒無弁式中圧LANZブルドック(あ!ココの表記はブルドックです) エンヂン
定格出力:17馬力
回転数/分:850又は1100
排気量:2256立方糎(cm・・・つまり2256ccということですね!)
調速装置:遠心式ガバナー,足踏、手動アクセルに直結
潤滑装置:ポンプ式にして新油叉は濾過油を潤滑
冷却:熱対流水冷式,ラジエターシャッター,温度計フブン(と読める)附き
牽引力:1300瓩(kg)
ミッション:略
燃料消費量:1.5〜1.8立(L)/時
タンク容量:20立

重量:1410瓩

ランツ・ブルドッグ D2016
機関:水平単気筒無弁式中圧LANZブルドック エンヂン
定格出力:22馬力
回転数/分:950
排気量:2256立方糎
調速装置:遠心式ガバナー,足踏、手動アクセルに直結
潤滑装置:ポンプ式にして新油叉は濾過油を潤滑
冷却:熱対流水冷式,ラジエターシャッター,温度計フブン(と読める)附き
牽引力:1829瓩
ミッション:略
燃料消費量:2.3立/時
タンク容量:29立

重量:1530瓩

ランツ・ブルドッグ D2416
機関:水平単気筒無弁式中圧LANZブルドック エンヂン
定格出力:25馬力
回転数/分:950
排気量:2616立方糎
調速装置:遠心式ガバナー,足踏、手動アクセルに直結
潤滑装置:ポンプ式にして新油叉は濾過油を潤滑
冷却:熱対流水冷式,ラジエターシャッター,温度計フブン(と読める)附き
牽引力:2080瓩
ミッション:略
燃料消費量:2.4立/時
タンク容量:29立

重量:1590瓩

思ったんですけど、大きくて重そうに見えて結構軽いんですね。

表紙を含めて3ページ目に入りますが、一言も「ラク」だとか「優しい」などの文字が出てきません。いきなり仕様書、その次はエンジンの解説ですもん。ココでは主に経済性が強調されています。
表紙を含めて3ページ目に入りますが、一言も「ラク」だとか「優しい」などの文字が出てきません。いきなり仕様書、その次はエンジンの解説ですもん。ココでは主に経済性が強調されています。

上図によって此の2-サイクル水平単気筒のLANZ Bulldogエンヂンは何故農業用に適するかお判りの事と思います。

って書いてあります。読んでると2サイクルの単気筒エンジン、すごく良さそうに思えてきちゃいます。「独特の焼表面式である為如何なる温度に於いても始動が容易」とありますが、動画などで見ているとそんなにかかりがよさそうには見えません。

焼表面式って、アタマをバンバン焼いて暖めてそれで圧縮混合気に火をつけちゃおう・・・という方式でしょうか? ということだったら、点火栓的な物は無いということでしょうね。

今度は構造の説明。でも、これはとても興味深い。
今度は構造の説明。でも、これはとても興味深い。

最小の部品数

各トラクターのエンジン内部の構成部品を比較してみました。真ん中がランツエンジンの部品です。
この写真で見る通り、いかに部品がが少ないか又構造が簡単であるか云う事は何時でも、何処でも、何人にでも容易に整備点検出来ると云う農業用トラクターに取って不可欠の条件です。

下の三つの写真、左が4気筒のディーゼルエンジンの構成部品、真ん中がランツ・ブルドックの構成部品、そして右端が4気筒ガソリンエンジンの構成部品です。これはすごいです。

確かにランツにはバルブがないし単気筒だしこういう事になりますよね・・・改めて見せられるとすごい違い・・・

ほとんどが機能説明です。気になった説明は2つ。
さらに進みます。ほとんどが機能説明です。気になった説明は2つ。

一つは右の一番上の絵の説明。

前車輪には左右各個にスプリングを備えてゐる。

ああ!やはりフロントにはショックがついていたんだ! 以前、『焼玉部分は何処へ?ランツブルドックD2016・・・「撮りトラ@土の館」』で見たフロントは動きそうに見えたんで「そうじゃないかなあ」って思ってたんです。

1958年導入の機体らしいですけど、ずいぶんすばらしい性能。当時のスーパーカーでしょうね。
1958年導入の機体らしいですけど、ずいぶんすばらしい性能。当時のスーパーカーでしょうね。

そして2つ目。

ラジエターブラインドは座席から調節でき、大きな工具箱を有する。

LANZブルドッグD2016  機種名 ランツブルドッグトラクタ 形式・仕様 D2016 20馬力 製造社・国 ランツ社 ドイツ 導入年度 1958年(昭和33年) 使用経過 北海道佐呂間町栄の酪農家 芝静二郎購入。輸入販売元は、札幌市三国商行株式会社が扱っていた。プラウ、ディスクハロー、モアー付で120万円で購入、酪農にはなくてはならないものとして大活躍した。  その後人の手に渡り、平成二年伊藤が譲り受け保存していた。
こうなっているわけですから、運転席からできないと困りますよね。そうでないといちいちエンジンフードを開けてシャッターを調整しなくちゃいけなくなってしまいます。
ランツはコンバインMD14Zという物も売っていたんですね・・・輸入販売元は三國商工株式會社とあります。千代田区神田五軒町四。
ランツはコンバインMD14Zという物も売っていたんですね・・・輸入販売元は三國商工株式會社とあります。千代田区神田五軒町四。

三國商工株式會社はあのミクニだった!

ちょっと調べてみたらすぐわかりました。三國商工株式會社はあのキャブレターを作っている「ミクニ」だったんです!

2ストのキャブレターでおなじみ(あ!これは僕にとっての話で、他にもっと有名な商品があるのかもしれませんけど)あのミクニ!
2ストのキャブレターでおなじみ(あ!これは僕にとっての話で、他にもっと有名な商品があるのかもしれませんけど)あのミクニ!

ちょっと会社情報からランツ導入のあたりまで抜粋

ミクニの歴史
1923 ・合資会社三國商店を創立。自動車・自転車およびその部品を輸入
1932 ・アマルとガレリーの気化器製造権取得
1933 ・株式会社三國商店を設立、合資会社の業務一切を継承
1936 ・蒲田工場が生産を開始
1939 ・三國商工株式会社と商号変更
1944 ・小田原工場(現小田原事業所)が生産を開始
1948 ・企業再建整備法により、第二三國商工株式会社(蒲田工場および貿易部門)と株式会社三國製作所(小田原工場)の2社に分割して発足
1949 ・小型自動車用気化器並びにメカニカルポンプの生産を再開
1950 ・第二三國商工株式会社を三國商工株式会社と商号変更
1955 ・株式会社三國製作所を吸収合併
1960 ・仏国ソレックス社と技術提携、ソレックス型気化器の生産を開始
1961 ・三國工業株式会社と商号変更、貿易業務を新設立の三國商工株式会社に譲渡

言いたい事だけ選りすぐり、シンプルに言い切ってムダな紙面は使わない。突っ込みどころナシ。潔いランツのカタログ、なかなか良かったです。

今日はこれでおしまいです。また明日!

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“突っ込みどころナシ。D1616/D2016/D2416/D2816 ランツ・ブルドッグ「昔のカタログ」その2” への2件の返信

  1. トラクター狂さん こんばんは

    ソレックス・・・そういえば聞いたことがあります

    ミクニはたいていのヤマハのバイクに付いていたんで覚えてました
    ホンダはケイヒンが多かったです

  2. 三國商工株式會社ってキャブレターのミクニだったんですね!

    ミクニソレックス…ですよね…

    トラクターだけではなく旧い車も好きなので知ってます!(名前だけですが…)

    ちなみに今車を2台所有してますが、どちらも自分より年上です(笑)

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